かたちのないサービスでも
その役割や取り組みが伝わる
“わかりやすい”統合報告書
サイバーセキュリティのリーディングカンパニーとして
業界を牽引し続ける株式会社ラック様は、
かたちのないサービスを扱っているからこそ、
「はじめまして」の方に事業内容が伝わりづらいのが悩みの種でした。
会社の魅力や取り組みを社内外に伝えるため、
「誰が読んでもわかりやすい」統合報告書をつくる、
リニューアルまでの道筋を語っていただきました。
3年目に感じた“マンネリ”
「もっと知りたい」と思える冊子へ
日野 ラックさんとアドバンドの最初の接点は「株主様向け報告書」の制作でした。数ある会社のなかから、当社にお声がけいただいた理由をぜひ教えてください。
土田様 個人株主向けの報告書を改定するにあたり、デザインや内容など、全体的を通してより親しみやすいものにしたいと考えていました。アドバンドさんは社内報を多く手掛けられていることから、より親近感のある制作物にしていただけるのではという期待感もあり、制作をお願いしました。
山下様 当社は、「サイバーセキュリティ対策」というかたちのないサービスを主に扱っています。そのため、業界になじみのない方に事業内容をわかりやすく伝えるというのが、なかなかに難しかったんです。これらの課題に対し、アドバンドさんはさまざまな見せ方を提案してくれて、大変に助かりました。
平岡 素敵なお言葉をありがとうございます! 今回、統合報告書のリニューアルにも携われたこと、光栄に思います。
日野 ラックさんは2021年3月期より統合報告書を発行されていますが、制作を始めたきっかけについてお聞かせください。
山下様 ラックはリーディングカンパニーとして、サイバーセキュリティの啓発活動を各地域で実施してきました。また、働き方改革を含めた人的資本の取り組みについても力を入れています。しかし、社員でさえどういう取り組みをしているのか、十分に把握できていないのが実情でした。そこで、当社がどのような会社か包括的に発信する媒体として、経営情報の要点をまとめた統合報告書の発行を決めました。
土田様 統合報告書は、機関投資家と証券会社がメインターゲットだと捉えています。それに加えて当社は、個人投資家や新入社員も含む「新規」を意識しています。新しくラックを知るすべての方が、当社について「もっと知りたい」と思ってくれるような内容にしたいと考えていました。
平岡 発行から3年、このタイミングでリニューアルに踏み切った一番の決め手は何でしたか?
山下様 やはり、マンネリ化ですね。毎年、構成内容やデザインレイアウトの変化が少なく、長年見ていただいている方には同じような見え方の冊子になっていたので、全体を刷新することにしました。アドバンドさんは、株主様向け報告書の制作時から提案を多くいただけていたので、統合報告書についてもマンネリを打破してくれるのではという期待感がありました。たとえば、当社のサービス範囲についても、イラストを用いてわかりやすく説明するという案を出してもらいました。このアイデアは統合報告書の方で採用させていただきました。
平岡 統合報告書はWeb閲覧を前提にしており、紙での発行はされていませんが、こちらの背景についてもお聞かせください。
山下様 一つは、費用面ですよね。印刷するとなると、やっぱりそれなりの金額が掛かってしまいます。企業にもよりますが、郵送対象となる機関投資家は国内外で200~300しかいないということを考えると、印刷しても配り先は限られてしまいます。加えて昨今、急速な電子化が進んでいます。特に我々はIT企業であり、ペーパーレスが業界的にも主流になっている今、電子版で進めていくべきだと判断しました。ただ、採用担当から「印刷して学生に配りたい」との声も寄せられていましたので、Web閲覧が前提ではありつつも、印刷した際にも読みやすいものをつくりたいと思っていました。
日野 リニューアル前の統合報告書は、ページ数に比べて圧倒的に文字数が多く、読みづらい印象がありました。なので、なるべく拡大しなくても見やすいように、1ページあたりの掲載量に気をつけてデザインを整理し直しています。内容はもちろん、デザイン面においても「誰が読んでもわかりやすい統合報告書」を目指しました。
読者が感じる引っかかりを
一つずつ紐解いていく
日野 リニューアルに際して、ご苦労された点はどのようなことですか?
土田様 情報を詰め込み過ぎず、いかに要点を伝えるかに苦心しました。あゆみや価値創造プロセス、サービス範囲、セグメント情報など、詳細を説明していくと際限がないため、どのくらいの粒度にするか悩みましたね。このあたりもアドバンドさんからの客観的なコメントをいただきながら、アウトプットイメージとしてデザインやレイアウトのパターンも出していただいて、何とか統合報告書に落とし込むことができました。
山下様 当社の歴史を語る「ラックのあゆみ」のページは、リニューアル前から存在はしていたんです。ただ、同じページの中で業績推移の話もしていたせいで、何を伝えたいかがわかりづらくなっていると、アドバンドさんから厳しいご指摘をいただいて(笑) 今回はその反省を踏まえて、各ページの役割をそれぞれ明確化させながら整理できたと思います。
土田様 事業領域についても、アドバンドさんの提案をもとに、コンサルや診断、監視などのサイバーセキュリティ対策を提供するSSS(セキュリティソリューションサービス)と、システムの開発や構築、保守を担当するSIS(システムインテグレーションサービス)の事例をわかりやすく図式化することができました。
日野 正直、制作当初の私たちは、ラックさんの事業や取り組みについてすべてを理解しているわけではなかったと思います。だからこそ「何を言いたいのかわからない」「表現が難しい」と思う箇所もありました。その引っかかりは読者の方も同じだと思い、解消するための提案をさせていただきました。無事、納得いただけるものに仕上げられて良かったです。
山下様 他のページも以前よりブラッシュアップすることができたと感じています。価値創造プロセスについても、資本を事業へ投入し、パーパス・ビジョンの実現へとつなげていく一連の流れをうまくビジュアルに落とし込むことができました。パートナーを選定している段階で、価値創造プロセスの図式化について、あまり良いお返事をいただけないことも多かったんです。ただ、アドバンドさんからは、「ぜひ、一緒に考えましょう!」と心強いお返事をいただけて、とても頼もしかったです。あとは今回、中期経営計画を発表するにあたり、社長メッセージの見せ方をがらりと変えました。こちらもアドバンドさん主体で進めてもらいましたよね。
日野 はい、中期経営計画については別途ページを設けず、社長メッセージ内で紹介してはどうかと提案させていただきました。
山下様 社長メッセージ内で、業績もふまえた上で、今後の中期的な目標について、当人の言葉で語られているのがいいですよね。読み手にとって重要な内容が、しっかり集約されているなと感じます。
平岡 社長メッセージは、統合報告書内において全体の内容を包括する、一種の目次的な役割も担っています。そのため、かなり重要度の高いページなのですが、どうしても文字数が多くなり、話題も多岐にわたるため、読み手が途中で離れてしまうことも少なくありません。そこで、デザイン面で読み手をリードできるように、話に関連した図を文章の間に差し込んでいます。さらに、何の話をしているかが一目でわかるよう、ページ下部には話題ごとの見出しを掲載。また、Web閲覧を前提にしていることを活かし、見出しの内容を話している箇所や各話題に関連したページへ、ワンクリックで移動できるリンクを挿入しました。デザインのリニューアルという点では他にも、章ごとにトビラとインタラクティブ機能を活かしたリンク付きの目次を設けることで、目的とする情報にたどり着きやすい動線づくりを行いました。
土田様 以前より、紙面にメリハリが生まれたと思います。ESGについても、1ページ内で取り上げる内容を絞り、文字数を抑えることで、格段に見やすくなりましたよね。担当者の方を囲み記事で取り上げることで、より具体性を持った内容になっていると思います。それに、人を多く出すことで、取り上げられた当人のモチベーションの向上や、あとは社内に対しても良い刺激が生まれることを期待しています。
「第三者」だからこそ
わかることがある
平岡 今回発行した統合報告書に対し、社内外から何か反応はありましたか?
山下様 社外取締役から、情報が充実し完成度がさらに高まったというお褒めの言葉をいただきました。また、社内掲示版に発行のお知らせを掲載したあと、事業統括部の責任者から「とてもよくまとまっているので、事業統括・営業領域の全体ミーティングで紹介してもらえないか」という打診がきました。これまでも統合報告書の発行は周知していましたが、声を掛けられたのは今回が初めてです。「ラックを知る」ためのツールとして最適であると、社内からも認めてもらえたようで、うれしかったですね。当社はもともと、複数の会社が経営統合している経緯もあり、社内でも文化の違いがまだ残っているところがあります。今回、統合報告書をリニューアルしたことを機に、あらためて「ラックのあゆみ」をまとめ直し、それぞれの事業範囲を明らかにしたことで、社内の人たちもさらに、自分たちの会社に対する理解を深めてもらえたのではと思います。
日野 今後ともぜひ、「誰が読んでもわかりやすい統合報告書」づくりを支援させていただければと思います。最後に、今後の目標やアドバンドに期待することがあればぜひお聞かせください。
土田様 サステナビリティの課題として、当社内でまだマテリアリティを定義しきれていないという課題があります。社会および自社の持続可能性に貢献するため、ラックがどのような取り組みを行っているか、明確に示していければと考えています。あとはやはり、ビジネスモデルや成長戦略についても、ストーリー性を持って統合報告書のなかで伝えられたら何よりです。
山下様 サイバーセキュリティの「対策」だけではなく、攻撃者の先の動きを見据えた「予見・予兆」を行っている点も取り上げていくことを視野に入れています。たとえば、最先端の研究開発であったり、リスクを見越した現場のサービス提供であったり、私たちのリーディングカンパニーとしての強みをよりアピールしていけるように、見せ方を考えていきたいですね。アドバンドさんはさまざまなデザイン・表現の仕方を知っていると思うので、ぜひ客観的なコンサルタントとして、我々の至らぬ点を指摘してもらえたら何よりです(笑) どうしても社内にいる我々は、わかったつもりになってしまうところがあるので。第三者目線の意見をもらえたらありがたいです。
平岡 私自身、ラックさんの取り組みや考え方を知って、大ファンになりました。だからこそ、ラックさんの強みをわかりやすく、魅力的に伝えるデザインを模索していきます。
日野 次年度以降は今回の制作をふまえ、より深い部分を見せていけるような企画を考えていきます。どうぞ引き続きよろしくお願いします! 本日はありがとうございました。