長期的な目線で理念の浸透をみすえた、
周年記念誌の制作

次代へ向けた成長をどう描くかが課題の株式会社ヴォークス・トレーディング様。「会社の理念への関心が薄い」状態が、要因のひとつとして挙げられました。課題解決のため、いくつかの施策を実施。そのなかで周年記念誌はどういった位置づけで作られたのか、ふり返ってもらいました。

制作目的を整理して
周年記念誌の役割が明確に



松本 はじめに、周年記念誌を制作することになった経緯を教えてください。

飯塚様 当社は創業350年以上の老舗商社である、ユアサ商事株式会社の食料部門から2002年に独立した会社です。2013年にハウス食品グループの一員となり、財務基盤が安定したものの、近年、業績の伸びが緩やかになってきている課題を抱えていました。今後の成長のために、全社がより一丸となって仕事に取り組めるよう、会社の理念のもと、同じ価値観を共有する必要があると考えていました。

藤森様 現在の社員数は100名ほどです。そのなかで、ユアサ商事の頃から在籍しているのが15名ほど、独立後の新卒入社が30名ほどで、残りは中途入社。理念や行動指針について話すことや発信することがあまりなく、「当社らしさ」の認識が社員ごとにあいまいになっている状態でした。

飯塚様 そこで、創立20周年に向けて「未来創造プロジェクト」というプロジェクトを発足し、各事業が広がってきた経緯やエポックメイキングなエピソードを収集することにしたんです。それらを教訓として活かし、今後の事業拡大や新規事業の立ち上げに役立てるというのが目的です。そして、集めた情報をまとめて、社員に配るための資料として「周年記念誌」という案が出たんです。

佐藤 7月頃にお問い合わせいただいた当初は、12月の周年イベントで配りたいというご要望でしたね。当社にご発注されたのは、どういった理由でしたか?

飯塚様 事例が豊富なことや、担当のお二人が親しみやすく、相談しやすい雰囲気があったことです。また、複数の業者にお声がけをして検討していたのですが、周年記念誌の企画や構成などがパッケージとして決まっている場合が多かったんです。それに比べてアドバンドさんは、ゼロベースというか、当社に合ったものを考えてご提案いただけたので。

藤森様 型にはめられるとか、決まっていることに沿ってやっていきましょう、というのは、うちは好きじゃないですもんね。

羽馬様 寄り添って一緒に作っていく、伴走してくれる、そんな姿勢に好感をもちました。

松本 ありがとうございます。初めにお話を伺った際、未来創造プロジェクトが素敵な取り組みだと感じました。ですので、周年イベントでの配布に間に合うように急いで、単に歴史や情報をまとめただけの冊子にするのは、もったいないと思いました。プロジェクトによって発掘された、ヴォークスさんで脈々と受け継がれてきたDNAを、いま在籍する社員や未来の社員にも浸透できるような冊子にすべきだと考えたんです。そして、「会社の歩みやエポックメイキングな事例など、未来を考えるうえでのヒントを掲載する」をコンセプトとして掲げ、「DNA再発見ブック」と題した周年記念誌を提案しました。

羽馬様 ご提案いただいたことで、私たちが整理できていなかった点が、すっきりしたんです。未来創造プロジェクトや創立20周年イベントの準備など、複数のプロジェクトが同時で走っているなかで、周年記念誌をどんなものにすべきかが、明確になりました。DNAという言葉も、私たちが浸透させていきたいものを表現するうえで、ぴったりだなと思いました。

飯塚様 そうですね。理念という言葉だと、社員としてはどうやら抵抗感があるようで。過去に一般的な「理念ワーク」のようなことを実施したこともあったのですが、あまりいい結果は出なかったんです……。おそらく、会社から押し付けられているような印象があったのが原因かと思います。ですが、今回のご提案のように、社員のなかにあるものを見つけて、整理して、広めていく、というアプローチが当社にはフィットした感じがしました。

羽馬様 実は、最初はゼロベースがゆえにどうなるのか不安な気持ちもあったんです(笑)ですが、実際に制作に入ったあとも密に連絡をとってくださり、安心して進められました。

飯塚様 当社側のタスクも整理してくださり、とても助かりました。


DNAを見つけるワークショップを実施
若手・ベテランを問わず意見が飛び交う場に



佐藤 当社が提案した企画はいかがでしたか?

羽馬様 「SUPER WORD」は、特によかったですね。社員にも人気のページです。

松本 ありがとうございます。20年の歴史のなかで生まれた、印象的な言葉を紹介する企画ですね。言葉を集めるために社員のみなさんにアンケートをとったり、ワークショップを行ったりしました。ワークショップには若手からベテランまで、約10名に参加いただきましたが、実施してみていかがでしたか?

飯塚様 やってよかったです。最初はアンケートから選んでいくことを想定していたんですが、ワークの場で出てきた言葉もたくさんあって。慣れない状況で、最初はあまり意見が出なかったのですが、徐々に熱い議論ができたかなと思います。また、先輩から後輩に伝わるべきことがちゃんと伝わっているんだ、ということがワークをしながら感じることができました。

羽馬様 若手がベテランにインタビューを行い、過去のエピソードを集めるという「事業探索ワーク」を、もともと社内で行っていました。それを通して知ってもらいたかった要素が、今回の「SUPER WORD」で言葉として挙がっていたので安心しました。

佐藤 掲載する言葉を選んでいくときに、意見があまり割れずに、すんなり決まっていったのが、当社としては印象的でした。こういったワークを行うと、相容れない意見が飛び交ってしまうこともあります。明文化されていなかっただけで、すでに同じ価値観が共有できていた証拠ですね。

松本 ヴォークスさんは、先輩・後輩のコミュニケーションが活発で、社員同士の仲がいいなと感じていたのですが、その結果が表れたようにも思いました。

藤森様 そうかもしれません。当社は「なんでもチャレンジしていこう」という自由な社風で、若手にもどんどんチャレンジしてもらうようにしていて。困ったときには先輩に相談したり、サポートしてもらったりしていくなかで、自然に受け継がれていったものがあったのだろうと思います。

飯塚様 創業から現在までのストーリーをまとめた「始まりの物語」もお気に入りです。一番大変でしたが(笑)

松本 確認と修正を何度かくり返しましたね。冒頭のページなので、冊子を読み進めるハードルを下げるために、イラストとともに読みやすくなるよう工夫しました。会社の成り立ちをまったく知らない人にとっても、分かりやすい内容にできあがったと思います。

飯塚様 はい。評判もよくて、こだわったかいがありました。あとは、「社員座談会」と「役員座談会」ですね。実は、実施するまでうまくいくか不安だったんです……。参加メンバーは個性的な方が多かったので。ですが、スムーズにファシリテーションを行っていただけたおかげで、無事に終えることができ、充実したページになりました。

羽馬様 特に「役員座談会」は熱いメッセージがあっていいですよね。こういったことを社員が直接聞く機会はなかなかないので。

佐藤 役員の方々も、座談会を楽しんでいただけたようです。集合写真の撮影にも積極的で、格好いい写真を撮ることができました。


未来の会社をつくるため
「発掘」から「浸透」へ



松本 今回、発掘したヴォークスさんのDNAですが、今後の「浸透」が大切になりますね。当社からはまず、新入社員研修で周年記念誌を使用して会社への理解を深めてもらうことを提案しましたが、実際に研修にてご活用いただけましたか?

藤森様 はい。4月の新入社員研修までに納品していただけたので、実際に使用することができました。当社の歴史や事業について、より興味をもってもらうきっかけになったと思います。今後は新入社員だけでなく、全社員との1on1ミーティングにて使用したいと考えています。ある程度の業務経験があった方が、この周年記念誌を使って、より深い議論ができるはずです。

佐藤 1on1ミーティングは、前から行っているんですか?

藤森様 昨年から始めました。各部署で取り組んでいるのですが、その場で話すテーマ設定に難しさを感じています。そこで、「この周年記念誌を読んだうえで、当社のDNAを体現するエピソードについて話す」というような使い方をしていきたいと考えています。

松本 今回この周年記念誌を作ったことで、共通の軸ができたからこそできる会話ですね。今後の課題や目標についてはいかがでしょうか?

羽馬様 未来の創造ですね。もともと、プロジェクトの目的はここにありましたから。この周年記念誌により目線が揃った状態で、当社らしさのその先には、なにがあるのかを考えるワークをやっていきたいと思います。

藤森様 今回の制作で感じたのは、社員を巻き込んで一緒にやっていくことが大切だということです。それが「浸透」にもつながると思います。ですので、当社にとって有効な取り組みやツールについて、今後アドバンドさんの事例からご紹介いただいたり、ご協力いただけたりするとありがたいです。

飯塚様 同感です。アドバンドさんは、単に周年記念誌を作るということだけでなく、インナーブランディングの視点から、寄り添ってくれました。それが心強かったです。新しくコーポレートサイトの相談をさせていただいているので、その際も、広い視野をもってご提案いただけると嬉しく思います。

佐藤 ありがとうございます。今回発掘したヴォークスさんのDNAを「浸透」できるように、幅広く提案していきたいと思います。

松本 今回は、最初にいただいたご要望から目的を整理し、適した手段として、周年記念誌のあり方から提案しました。当初ご希望だった納期をずらすことにもなり、少々厚かましい提案だったかもしれませんが、ご承諾とご納得いただきありがとうございました。インナーブランディングを強化し、会社がさらに成長していけるよう、これからも支援していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。


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