統合報告書

上場企業にとって、「SDGsの達成にむけてESG経営をめざす」と宣言するのに最適な統合報告書。
経済・社会・環境・ガバナンスなど財務・非財務情報を、一冊のパッケージで表現できるのが利点です。
機関投資家を主な対象としつつ、顧客やサプライヤー、就職希望者など幅広いステークホルダーに対し、価値創造ストーリーをわかりやすく展開することで、企業ブランドを正しく伝えることができます。

「明文化」と「具現化」、
2つのフェーズ

初めて統合報告書を発行する場合、制作には大きく2つの工程があります。
フェーズ1の「明文化」では、社会課題に対して、現在の延長ではなく未来からバックキャストする形で、自社のあるべき姿を想像しながら、新たな事業コンセプトを検討します。
マテリアリティの特定、パーパスの制定、価値創造モデルの図式化などに取り組みます。
ここでは、コンサルティングに強みをもつ支援会社の協力を仰ぐケースが多いようです。

次に、フェーズ2の「具現化」では、フェーズ1での決定事項を元に、メディアやページ構成を検討します。
外部開示には印刷物やWebサイトなどのアウトプットが必要になるため、支援会社の選定が必須。
企画・表現力に優れ、IRやCSRに知見や実績が豊富な支援会社に協力を依頼します。

ところで、二つのフェーズに分けて考えるのには、理由があります。
一つは、フェーズ1とフェーズ2では、支援を仰ぐ専門領域がまったく異なるからです。
フェーズ1は事業コンセプトを考える領域で、経済・社会・環境にくわえ、経営に関する知識が必要。
一方、フェーズ2はアウトプットとして形にする領域で、コンテンツやデザインなどクリエイティブ能力のほか、印刷物やWebなどメディアについての知識が必要です。

面倒だからとIRコンサルティング会社に一括発注したため、発行の翌年以降、「ほんの少しの改訂なのに、膨大な費用がかかってしまった」というケースもあるようです。
同じ支援会社に発注するにしても、2つのフェーズごとに発注しておけば、このような問題は発生しません。

ちなみに、私たちアドバンドの場合は、①フェーズ2のみを請け負い、クリエイティブ領域のみを支援する ②フェーズ1・フェーズ2を請け負い、コンセプト領域はパートナー企業と協力して支援するという、2つの発注方法をご用意しています。

■統合報告書発行への2つのフェーズ

明文化フェーズ❶
フレームワークと
ガイドライン

フレームワークとは、意思決定や問題解決において、だれもが共通して利用できる枠組みのこと。
統合報告書で最も広く活用されているのは、IIRCによる「国際統合報告フレームワーク」です。
また、国内では、2017年5月に経済産業省が公表した「価値協創ガイダンス」があります。
一般的には、これら指針に沿って進めるのですが、オリジナリティある冊子にするには工夫を要します。

さらに、ガイドラインを活用することで、主に非財務情報の正確性・信ぴょう性を高めることができます。
世界で最も広く知られているものに「GRI」がありますが、ほかにも、米国初の「SASB」、最近では気候変動への注目が高まるなか、2015年に「TCFD」が設置されました。
これらのガイドラインは企業ごとに開示レベルが異なり、外部保証や外部評価にも利用されています。

■統合報告書制作のための主なツール

明文化フェーズ❷
マテリアリティの特定

マテリアリティとは「自社にとっての重要課題」を指し、この特定は、将来の経営方針を大きく左右します。
以前から大企業を中心に使われてきた手法で、これまでは「経済・社会・環境への影響」と「ステークホルダーへの影響」などを縦軸と横軸にとり、2軸マトリクスで優先度を評価するのが主流でした。
しかし最近では、気候変動のような地球規模の緊急課題に対処するため、「企業が経済・社会・環境に与えるインパクトの著しさ」を重視する方向にシフトしています。

マテリアリティの特定には、2つの方法が主流です。
一つは「SDG Compass」を使うやり方で、バリューチェーンにSDGsをマッピングする方法が登場します。
ボトムアップで正確に策定できるのはメリットですが、フォアキャスト思考になりがちなデメリットもあります。

もう一つは、バックキャスト思考で、外部環境や社会課題から将来のあるべき姿をイメージする方法です。
正・負の影響を及ぼす可能性のあるイシューをロングリストの形で書き出し、これを元にディスカッション。
優先順位をつけながら、自社の事業にとってインパクトの大きいテーマをしぼり込みます。
さらに、SDGsの達成にコミットしたいときは、SDGsの17目標とのリンケージを表現します。

[実例]
バリューチェーンにおけるSDGsのマッピング
[実例]
マテリアリティ(重要性)を
基準にした優先SDGs
報告事項のマッピング

明文化フェーズ❸
パーパスと価値創造モデル

「なぜ、その企業が存在しているのか?」への回答を言語化したもの、これをパーパスといいます。
日本では「存在意義」と訳すことが多く、「何をめざすのか(What)」を示すミッションとちがい、「なぜ、存在するのか(Why)」を示すという点が異なります。
価値創造モデルをつくるには、まず企業のパーパスを定義し、これを念頭に考えることが多いようです。

この価値創造モデルとは、社会課題をふまえた企業のあり方と方向性を図式化したものを指します。
企業活動の全体像を俯瞰できることが特徴で、IIRCによる基本概念図「オクトパスモデル」によると、左右対称の構図が基本で、6つの資本、インプット、アウトプット、アウトカムで成り立っています。

ただし、オクトパスモデルにこだわり過ぎると、個性が表現しにくく他社との差別化ができません。
基本要素を踏襲しつつも、自社のビジネスモデルや強みに合ったオリジナリティある構成が望まれます。
これら明文化フェーズが完成すれば、いよいよ具体的なアウトプットとなる具現化フェーズです。

■IIRCによる価値創造プロセスの基本概念図(オクトパスモデル)

具現化フェーズ❶
メディアと支援会社の選定

統合報告書のメディアとして、これまでは印刷物が前提でしたが、最近では様変わりしています。
環境配慮の観点からデジタル・ファーストを前提に、「印刷しない」という選択をする企業も増えてきました。
どちらにしても、Webと印刷物にはメディアとして明確なちがいがあることを理解する必要があります。

コーポレートサイトのIR情報やサステナビリティ情報などは、PULL型メディアです。
掲載できる情報量は実質無限で、しかもタイムリーな開示ができるというメリットがあります。
ただし、株主や投資家ほかユーザーが訪問してくれなければ、接点をもつことができません。

次に、PUSH型メディアの印刷物は、機関投資家や重要な顧客・取引先に郵送する、あるいは、営業先や面会時に手渡すなど、能動的に接点を生み出すことができます。
また、見映えがよく一覧性のある印刷物のほうが、ユーザーが価値を感じやすいという利点もあります。

統合報告書をWeb上のPDFのみで開示するのか、Webにプラスして印刷物を発行すべきか。
これには、社内での十分な議論とともに、支援会社の意見を参考にすることが大切です。
そのため、支援会社を選ぶときは、財務・非財務開示の実績があることはもちろんですが、Webと印刷物のメディア選定にくわしいことも重要なポイント。
自社の方向性に合うメディアの選定や表現手法の知見は、今後のIR/CSR活動に不可欠だからです。

■プロジェクトのチーム体制(例)

具現化フェーズ❷
ページ構成とコンテンツ

統合報告書に掲載する主なコンテンツには、「財務」と「非財務」の情報があります。
財務情報とは、いわゆる従来のIR情報で、ある時点もしくは一定期間の経営状態を示すデータのこと。
BSやPLなどの財務諸表や、売上・利益の動向、これらから導き出される各種指標を指します。

一方、非財務情報には「知的資産」や「ESG」があります。
知的資産には、研究開発やイノベーション、知財・パテント、有力な販売先などの無形資産に加え、研究設備や工場など自社のプレゼンスを発揮するための有形資産もふくまれます。
ESGでは、環境・社会・ガバナンスの取り組みそのものや、これらのリスクを回避するための施策、あるいは逆に、ビジネスチャンスを獲得するための機会についても言及します。

したがって、統合報告書の構成は、経済・社会・環境・ガバナンスという4つのスコープを意識しながら、下表にあるような、7つのコンテンツを中心としたページ展開を検討することが基本。
ただし、メーカーのような目に見える製品を扱う企業と、SIerのような無形サービスを提供する企業では、訴求すべきコンテンツは大きく異なります。しかも、情報をただ並べるのではなく、一貫した価値創造ストーリーとして形づくれるかどうかで、統合報告書の品質が決まります。

■統合報告書 7つのコンテンツ

具現化フェーズ❸
インタラクティブPDFの
優位性

インタラクティブPDFとは、その名のとおり、提供者側とユーザー側で相互作用できるデータ様式のこと。
目次やナビゲーションからワンクリックで見たいページに移動できるため、使い勝手が良いのが特長です。
もちろん、通常のPDFと同様、プリンタで出力したり、印刷物として製本したりすることもできます。

さらに、他のメディアとの融合が容易になることも、大きな利点です。
ハイパーリンクを設定すれば、ブラウザが開いてWebページを閲覧できる、あるいは別のPDFが開く。
動画を再生することもでき、メディアミックスのハブとして機能します。

統合報告書の読者には、機関投資家やアナリストのように、くわしく知りたいヘビーユーザーもいれば、お客様や就活中の学生のようなライトユーザーも存在します。
たとえば編集方針として、後者をターゲットとして広く配布できる簡易な統合報告書を発行しつつ、前者に対しては詳細情報を網羅したPDFデータやWebページへ誘導することで、統合報告書の本体のボリュームを抑制することができます。

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ノウハウBOOK 3

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A4判/62ページ 並製本
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冊子のみどころ

企画・編集のノウハウが満載
メディア選択のヒントもわかる!

フレームワークやガイドラインに則りつつ、自社の“らしさ”をいかに表現できるか。コンテンツのまとめ方やと表現の仕方ほか、印刷物とWebのすみわけなどメディアに対する知識が深まります。

「統合報告書、Happy宣言。」
アウトプットに強いIR支援会社

初めてつくるお客様には、パートナー・コンサルタントと連携して一括支援。改訂をのぞむお客様には、客観的な視点でレビューし、読者が納得・満足するための改善提案を支援します。

コンテンツ

02
はじめに
10
第1章
IRの方針 編

IRとは
IR担当者の困りごと①
IR担当者の困りごと②
IR担当者の困りごと③
IRツールの整理

26
第2章
IRツール 編

コーポレートサイト
企画・構成のポイント
統合報告書
サステナビリティの歴史
SDGsの基本
発行への2つのフェーズ
明文化①
明文化②
明文化③
明文化④
具現化①
具現化②
具現化③
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