他社にはない強みをカタチに
ゼロベースの提案で挑むリニューアル
総合機械商社として確固たる地位を築く一方、幅広く事業を展開しているがゆえに、自社ならではの強みを外部へ伝えきれずにいた第一実業株式会社様。3年ぶりの定期的な見直しのタイミングで実施されたコンペにおいて、アドバンドは他社との違いが正しく伝わる構成への刷新を提案。リニューアルのパートナーに選んでいただきました。今回、新たな一冊が完成するまでの道筋について、コーポレートコミュニケーション部の皆様にお話を伺いました。
「抽象的な言葉」への指摘をフックに
情報を一本につなぎストーリーを構成

鳥居 第一実業様とは会社案内動画の制作から始まり、Webマーケティングのご相談など、もう7年近くにわたる長いお付き合いになりますね。今回、統合報告書のリニューアルにあたって、再度コンペの場に呼んでいただけたこと、大変光栄に思います。
長谷川様 コンペで印象的だったのが、「せっかく素敵なコミュニケーションワードやミッションがあるのに、それぞれの言葉と事業内容との関連性が打ち出せておらず、ただ並んでいるだけなのでストーリーが見えてこない。だから、もやもや感が止まらないんです」という切り口から始まったことでした。アドバンドさんの、駄目なところをズバッと指摘してくれて、その上で自分たちらしい提案をしてくれる。そういう姿勢がすごく刺さりました。
鳥居 メッセージが「抽象的な言葉」に終始してしまい、具体的な中身が伝わっていなかったこと。それこそが「もやもや」の根本原因だと思ったんです。本来、企業の姿勢を表すメッセージと実際の事業活動は、お互いに結びついて連動していなければ、ステークホルダーには伝わりません。しかし当時は、言葉はあるのに、肝心の「何をどこから仕入れ、どう売っているか」という具体的なビジネスモデルと結びついておらず、バラバラに浮いてしまっていました。具体と抽象が噛み合っていないからこそ、結果として、ステークホルダーに「なぜ第一実業でなければ解決できないのか」という存在意義が伝わりづらい状態になっていたんです。成長戦略も含めて、過去から未来へのロードマップが一本の軸としてつながっていないのが、もったいないなと。だから今回のコンペでは、これまでのやり取りで感じていた皆様の温かい「人間味」を伝えるビジュアル表現から、ブツ切りだった情報を一本のストーリーへと再構築する構成案まで、あらゆる企画や見せ方の手段を尽くし、課題を根本から解消するゼロベースの提案をさせていただきました。
長谷川様 実は当時、一番扱い方に悩んでいたのが、第一実業を広く社会に伝えるために作った「世界のモノづくりに、創造の翼を。」というコミュニケーションワードでした。この言葉だけでは、当社の多様な事業や強みを説明しきれておらず、少し宙ぶらりんになってしまっていたんです。ずっと「この言葉の背景にある、第一実業らしさを補足する文章が必要だ」と思っていたところ、アドバンドさんはコンペの段階で、まさにその行間を埋める具体的なコンテンツを提案書のなかに落とし込んでくれたんですよね。
小川様 もともと報告書としての形はできていたものの、新たな気づきや視点を取り入れながらブラッシュアップしていくという点では、十分にできていないと感じていました。また、同業他社の統合報告書を読んだ際、表紙のデザインや全体の構成が当社の冊子と似た傾向にあることにも気づいたんです。このままでは、当社ならではの強みや個性がステークホルダーに十分に伝わらないのではないかという課題意識を持ちました。アドバンドさんは、以前コーポレートブランディングについてフワッと相談した際にも、学びの多い提案をたくさん返してくれたという印象がありました。今回のコンペや実際の制作を通しても、当社らしさを引き出し、それを伝わる形へ落とし込む提案力の高さを強く感じました。
鳥居 以前ブランディングのご相談をいただいた際も、グループの一体感を強めるために、ロゴやVIを統一していくことの必要性やメリットについてお話させていただきました。そもそもB2Bの企業さんで、そういったブランディングの領域をカチッと決めているところは少ないため、難しい部分もありますよね。実際、今回のリニューアルでも、第一実業さんの中で明確なルールは設定されていなかったと記憶しています。 だからこそ私たちは、各所のコミュニケーションワードやミッションの言葉選びを細かく紐解き、第一実業さんが持つフランクな「親しみ感」こそが最大の強みであると仮説を立てました。コンペではその空気感をあらかじめ具体的な誌面のストーリーやビジュアルとして形にしてお見せし、実制作においてもそこを起点に、ブラッシュアップしていく方法で進めていきました。
ビジュアル面の印象も大きく刷新
伝えたい内容に適した方法選び

齋藤 統合報告書のなかで、ここはより良くなったと感じるページはありますか?
髙橋様 少し大きい話になりますが「写真の撮り方」ですかね。ロケハンの段階から「今まで検討したことがない場所」を提案してくださって。特に会長のポーズが非常に斬新で、ご本人も最初は「こんなポーズで大丈夫か?」と心配されていましたが、出来上がってみたら今までにない新しさですごく気に入っていました。同じような画角の写真が並んでいた過去の誌面と比べて華やかになったようにい思います。
齋藤 撮影のときは私たちが役員の方々に指示を出すので、実はすごく緊張していました。でも皆様のご協力もあり、とても良い表情を撮影することができて、デザイナー冥利につきます。
小川様 役員の方々の笑顔の写真が本当に素敵ですよね。当社はお堅い社名で、これまでの発行物も古臭いイメージがどうしても拭えなかったのですが、皆さんの人間味あふれる実像がそのまま伝わる誌面になりました。経営陣もこの変化を肯定的に受け入れてくれています。
長谷川様 それと、表紙や中面にあしらわれたイラストも、社内で非常に好評です。個人投資家向けの資料の最後にもそのイラストを入れさせてもらっているくらいで。
鳥居 イラストについては、単に事業内容を正確に理解させることだけを目的とせず、見た人が「なんとなくこの会社の温かい雰囲気」を感じ取れるようなデフォルメ感を意識しました。ページ数が多く情報が煩雑になりがちな統合報告書だからこそ、最後まで「読み飽きない構成」にするための視覚的な工夫は特に気にした点だったので満足いただけて嬉しいです。
齋藤 手前味噌ですが、価値創造プロセスのページもこれまでにない雰囲気に仕上げられたのではないかと思っています。「これまでは成長ストーリーや価値創造の流れをうまく表現できていない」という課題をいただいていたのですが、情報開示のボリュームや質を急激に高めるのは難しい。そこで、今ある戦略や第一実業様のアセットを活かし、どう見せるかという工夫に注力しました。結果として、視覚的なアプローチで成長ストーリーを表現する形に行き着いたんです。
小川様 たしかに。典型的な左から右へ広がっていくものではなくて、未来へとつながっていくような立体感がありました。こういう細かい見せ方のひとつひとつにも、私たちの「らしさ」がしっかりと現れているなと思います。
分かりづらい事業もわかりやすく
ブランドイメージを固める足がかりに

鳥居 コンテンツの核となる部分では、初年度ということもあり、全ての事業本部長へのインタビュー時間をいただきました。あれは我々にとっても、第一実業様のビジネスを深く噛み砕くための貴重な時間となりました。
小川様 全事業本部長へのインタビューは当社としても初めての試みで、同席した私たち自身も初めて知る現場の取り組みがたくさんあり、とても勉強になりました。当社には7つの事業がありますが、それぞれビジネススタイルが異なり、一言で説明するのが非常に難しいんです。アドバンドさんはそのヒアリング内容を踏まえ、目に見えるビジネスモデルの図へと落とし込んでくれました。CFOからも「これまで説明に苦慮していた部分が、ぱっと見てわかるようになった」と好評の声が届いています。
工藤様 私は4月にこの部署に異動してきたばかりで、当時は自分の担当業務のことしか把握できていませんでした。でも、この統合報告書を読んで「会社全体でこんなに幅広い事業をやっていたんだ」と改めて理解を深めることができました。
鳥居 そうした対話のなかで、第一実業様の本質的な強みは、単なる商社機能に留まらない「現場のエンジニアリング力」にあると確信したんです。そこで、当初の構成案にはなかったエンジニアリング本部長へのインタビューと、その独自の強みを深掘りする特集ページの作成を、制作途中でご提案させていただきました。
小川様 そもそも当社は、「次世代型エンジニアリング商社」を掲げながらも、それを具体的に訴求できているツールが今まで何もなかったんです。機械商社はどこも同じように「エンジニアリング」という言葉を使いがちなので、他社との差別化をどう表現すべきか悩ましい部分でもありました。今回、アドバンドさんがそこに切り込み、特集としてしっかり形にしてくれた。続けて社内でも意識の変化があり、次の決算説明会で社長が「うちの強みである現場力を前面に出そう」と自ら発信する流れができてきています。結果として、次回の統合報告書でさらに現場のエンジニアリング力を深掘りして取り上げるという、良い循環が生まれるきっかけになりました。
長谷川様 もう一つ、アドバンドさんのまとめ方が上手いなと思ったのが「マテリアリティ」のページです。これまでは内容をただ羅列していただけだったのですが、今回はそれを起点に全体のストーリーを展開してくれました。
鳥居 第一実業様のマテリアリティが「これ無くして成長戦略『V2030』を達成することができないほど、重要な課題」という位置づけに変更されたんですよね。経営戦略と非常に強く紐づいているものだからこそ、よくある「ESG」という切り口で分けるのではなく、事業活動そのものや、そこに紐づく社会的活動をマテリアリティの枠組みの中でダイレクトに紹介すべきだと考えたんです。
小川様 以前は投資家面談で「戦略とマテリアリティが紐づいていない」と厳しい指摘を受けていたのですが、その課題も見事に解消されました。また、今回の刷新によって「日経統合報告書アワード」での評価も、全体の点数が一気に平均点へ近づいたんです。これには経営陣も非常に喜んでいました。アワードの点数だけに囚われすぎると本来の目的を見失ってしまいますが、良い開示ができれば結果は自然とついてくる。一つの指標として、今後も客観的な評価を取り入れていけたらと考えています。
長谷川様 このリニューアルの手応えを経て、次はインナーツールである「グループ報」の制作もアドバンドさんにお任せすることに決めました。
髙橋様 社内報の提案でいただいた企画も、今までの私たちにはなかった発想ばかりでワクワクしています。今後は統合報告書で培った外向けの「らしさ」と、社内報で共有する内向けの「らしさ」を上手く住み分けながら、さらに多くの社員を巻き込んでいっていただけたら嬉しいですね。
齋藤 ありがとうございます! 今年度の統合報告書は、時代の潮流に合わせて「横型」への体裁変更を予定しています。形が変わるだけでなく、昨年描ききれなかった競争優位性や、現場の「人」の強みをさらに掘り下げていければと思います。
小川様 アドバンドさんには、これからも私たちの想像を超える提案と、時にはプロとしての鋭い「ダメ出し」を期待しています。これからもどうぞよろしくお願いいたします!
